B2Bのフードシェアリング。フードロスを解決する「シェアシマ」における7つの懸念点【食品従事者記載】
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どうも。「食彩life」「やさしい食品表示ラボ」を運営している dai です。(プロフィールはこちら//食品業界情報は→こちら)
フードロスに解決策に対して、B2C向けの「Reduce Go」「TABETE」「フードパスポート」などがサービスを展開しておりますが、B2B向けのシェアシマ(食品メーカーのためのマッチングサイト)というサービスはご存知でしょうか。
今回は、シェアシマにおける7つの懸念点について記載します。元食品メーカーの方が起業した会社になります。非常に関心があり、まとめてみました。
「シェアシマ」とは
「シェアシマ」とは、食品メーカーのためのマッチングサイトになります。原料・食品原料の売買をマッチングするサービスになります。ICS-net 株式会社(本社:長野)が運営しております。2018年11月リリース予定になります。2019年3月1日に本格稼働されております。
「シェアシマ」のサービスの概要
シェアシマのサービス(加工食品を売りたい食品メーカーと買いたい食品メーカーをつなぐ仲介サイト)の利用の流れは、こちらになります。
- 必要な食品原料を探す
- 商品規格、アレルゲン、添加物などを確認する
- 問題がなければ、商品購入する
- 商品購入すれば、シェアシマが配送手配
<サービス開始時> 2018年11月リリース予定 2019年3月本格稼働
<展開エリア> 国内
また、食品メーカーの不満を解決する情報やソリューションも提供しております。
「シェアシマ」で実現したい未来
日本の社会問題、フードロスがありますが、食品工場現場での原料の大量廃棄も大きな要因の一つになります。「シェアシマ」を通じて食品流通の仕組みを変え、フードロスの解決の一つの選択肢になれば、と考えれらております。
- 多くの中間業者を通す現在の流通の仕組みでは、原料の情報共有ができず、食品ロスを生んでいる。
- マンパワーに頼る非効率な仕入れ
シェアシマは、食品業界の商流の仕組みを変更させたいのだと思います。
一般的な流れ | シェアシマの利用の場合 | |
商流 | 原料メーカー→一次問屋→一次問屋(→二次問屋→….)*→食品メーカー | 原料メーカー⇆食品メーカー |
会社間の取引によっては、問屋が一次問屋、二次問屋…とある場合もあれば、逆にメーカー同士の直取引もあります。
- 食品原料の情報の共有
- 小ロットでも低コストで調達
- 様々な食品メーカーをマッチングさせ、新しい原料に出会えるコンシェルジュサービスの提供
- 在庫廃棄のリスクを減らせる
フードロスに関して深く知りたい方はこちら。
①フードロス(食品ロス)とは?食料ロスと食料廃棄の違いや原因など、食品従事者が徹底的にまとめてみた。
②今から家庭でできる!いち消費者の6つのフードロス対策【食品関係者記載】
③食品業界が取り組むべき8つのフードロス対策とは【現役食品メーカー勤務者が分析】
食品メーカーの原料をマッチングさせることに関する7つの懸念点
「シェアシマ」では、加工食品を売りたい食品メーカーと買いたい食品メーカーをつなぐ仲介サイトであり、完全なB2B向けのプラットフォームになります。そのため、フードロスに解決策に対して、B2C向けフードシェアリングサービスである「Reduce Go」「TABETE」「フードパスポート」とは全く違います。
他社工場に納入された原料をマッチングさせる際に、考えうる懸念点を個人的に考察してみました。「シェアシマ」のサービス、食品メーカーの原料をマッチングにおける7つの懸念点はこちらになります。
- リスクを冒してまで原料シェアをするのか?
- 規格書上の問題
- トレースの問題
- 原料管理の問題
- 責任の所在が不透明
- シェアシマを利用する判断・決裁は誰がするのか?
- そもそも工場における原料ロスを転売したいのか?
原料シェアの問題
そもそも食品メーカーが、他社の食品メーカーの原料をシェアしたいのか疑問が残ります。他社の原料を使用したいときは、よほどの非常事態のみではないのかと思われます。
例えば、その原料が終売しており、メーカーが在庫を持っていない、その上、代用原料を使用したいものの食品表示に矛盾するため使用できないといったレベルの非常事態のこと。
というのも、他工場と原料シェアすることは下記の様々な問題に直面するからです。シェアするぐらいなら、メーカーや帳合に問い合わせし、なんとか持ってきてほしい、とお願いすることでしょう。
規格書上の問題
食品工場で製造する商品には、商品規格、規格書、原材料シート、製造工程表が少なくともあります。場合によって、MerQurius、インフォマート、foods eBASEなどの規格書でやりとりしている商品もあります。
そのような規格書を求められる商品はより詳細な情報を求められることがあり、原料の流通経路も確認される場合があります。他社の原料をシェアしているとは、道義的に理解してくれても、大手CVS、監査の厳しい会社であれば、全く納得していただけないでしょう。
そのような指摘を受ける可能性があり、なかなか原料をシェアできる環境が食品業界に備わっているとは、言い難い現状です。
トレースの問題
原料流通が変わる為、しっかり早急にトレースバック*できるのかの問題があります。
もちろん、シェアシマが責任を持って行うと思いますが、トレースする場合は、クレーム時や監査時などで時間的な猶予がないことが多いです。
トレーサビリティの一つの形で、物品の流通履歴・記録を時系列でさかのぼるもの。例えば、消費者が、食品の流通履歴・記録をさかのぼってその生産履歴を確認したりする場合がこれにあたる。
果たしてスピーディにトレースバックできるのか、少し疑問が残るのが個人的な意見になります。
原料管理の問題に関して
他社食品工場での使用予定の原料をシェアする場合、原料管理・保管の問題があります。
原料保管に関して、適切な環境で保管されているのか、破袋はないのか、など適切な管理されているのか不明です。また、どの会社から原料が届くか不明のため、監査することもできません。
シェアシマとしてどのような原料管理を携わるのか、それとも、売りたいメーカーに委ねるのか判断は分かれますが、しっかりとした管理が必要になります。
通常時は問題ありませんが、何かトラブルに巻き込まれた際にこの問題は大きくなるからです。
責任の所在が不透明
破袋などの何か問題のある原料が受け入れ時に気付いた場合は、シェアシマに確認・対処できます。
しかし、原料荷受時に見落とす場合もあるかもしれません。何か問題のある原料を使用した場合の責任の所在が不透明であります。
また、何も問題はなかったものの、製品としてクレームが発生した場合の責任の所在が曖昧になりやすいです。
一般的な商流・物流とシェアシマ利用の場合の商流・物流
一般的な販売における商流・物流とシェアシマ利用の場合の商流・物流を表にしております。
一般的な販売の流れ | シェアシマの利用の場合 | |
商流 | 原料メーカー→一次問屋→
一次問屋(→二次問屋→….)*→
食品メーカー |
原料メーカー⇆食品メーカー |
物流 | 原料メーカーの倉庫or工場→
(問屋の倉庫→)食品メーカーの工場 |
食品メーカーの工場→
(シェアシマ→)食品メーカーの工場 |
会社間の取引によっては、問屋が一次問屋、二次問屋…とある場合もあれば、逆にメーカー同士の直取引もあります。
シェアシマ利用の場合、通常の販売の流れで購入した原料を二次流通させます。そのため、物流工程が多く、万が一商品の破袋が起こった際、何処で破袋したのか判断するのが、なかなか大変だと思われます。
そして、厄介なことがあります。
それは、製造元の原料メーカーだけで報告書をまとめることができないことです。、二次流通させているため、製造元の原料メーカーだけの報告書では不完全で、食品メーカーの工場→(シェアシマ→)食品メーカーの工場の間の報告書も必要になります。
これは非常に面倒な作業になります。そのため、その場合のケアを検討しておく必要がありますね。
シェアシマを利用する判断・決裁は誰がするのか?
シェアシマを利用したい工場担当者がいるとしましょう。では、シェアシマを利用する判断・決裁は誰が行うのでしょうか?
一従業員ができるレベルではありません。あまりにリスク、責任を終えることができません。
工場長レベル(個人的には、工場長レベルで判断は難しいと思いますが)、役員、社長が判断・決済することになり、なかなかアクティブにサービスを使用することができないように感じます。
そもそも工場における原料ロスを転売したいのか?
そもそも工場における原料ロスを転売したいものなのでしょうか?
販売するということは、他社の原料とはいえ、販売責任が発生します。そのような面倒なことを工場担当者がするとは思えないです。
ただ、工場に営業担当者がいるのであれば別です。数字の成績を達成するために活用するでしょう。また、工場担当者でも廃棄ロスの改善が自分の成績に反映される場合、大いに利用するはずです。
そのような環境によっては積極的に利用する方もいるかとは思いますが、営業的なスキルが少し必要だと思っております。
最後に
今回は、加工食品を売りたい食品メーカーと買いたい食品メーカーをつなぐ仲介サイト「シェアシマ」における7つの懸念点をまとめてみました。
食品原料の大量廃棄を解決するため、B2B向けのプラットフォームをリリースさせるとのことでした。色々分析してみましたが、他意はありません。これからも「シェアシマ」の発展を楽しみにしています。
フードロスに向き合う様々なサービスに関して、独自にまとめたページはこちらになります。ご関心があれば是非どうぞ^^
「食彩life」の運営者 dai が食品業界を分析した内容を無料で配布しております。
令和時代に向けて是非とも知っておきたい食品業界情報になりますよ。
食品業界の実態・トレンドを知ることで、食品業界の知識の向上に役立たせることができます。また、食品業界を目指している方にとって、食品メーカーで従事していた生の意見(一次情報)を知ることができます。
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